4.5 義務教育を受けられない子供たち

目標 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする

出典:外務省訳

こう聞いた時にみなさんの頭の中にすぐに浮かぶのは、日本から遠く離れたアフリカやラテンアメリカの貧しい国で生活する子ども達ではないでしょうか?

それも当然です。現在の日本では小学校から中学校までの義務教育制度における就学率はほぼ100%を達成しており、“日本国籍を持つ子どもたち”で義務教育を受けられないということは特殊な状況を除いてありません。

ですが、日本には歴然と”義務教育を受けられない子どもたち”が存在しているのです。

それは外国人労働者の子供たちです。

世界的に外国人労働者の需要が高まる中、日本でも外国人労働者獲得のために様々な支援制度を設けています。

ですが、その子どもたちに対する支援に関する制度は驚くほど少ないのが現状です。

“1万9654人が不就学の可能性”

2019年9月、文部科学省は義務教育を受ける年齢に相当する外国籍児12万4049人の就学状況を初めて全国調査しました。すると全体の15.8%にあたる1万9654人が不就学のままであるという現状が判明しました。

日本国籍を持つ子供たちの就学率がほぼ100%であることを考えるとこの数字は驚くべき低さです。

また義務教育後に高校に進学する外国人労働者の子供たちの割合はさらに低く60%以下に留まります。

つまり、外国人労働者の子どもたちの実に50%近くが中等教育以下の教育しか受けられていないのです。

外国人労働者の権利問題

が議論に上がるとき、その多くは居住権や選挙権など大人の権利についてですが、子どもたちの権利については不思議なほど見過ごされてしまっているのが現状です。

将来の日本を支える子供たちに十分な教育の機会を与える事のないまま、多文化共生社会の実現をしようなどというのはまさに絵に描いた餅でしょう。

もちろん、静岡県・浜松市、岐阜県・可児市など、外国人労働者の多く住む地域の中には早くからこのような子どもたちの就学問題に積極的に取り組んでいる自治体もあります。

ですがそれらの自治体は特殊な例で、全国的に見ると外国人労働者の子どもに対する就学案内や手続きなどの規定を設けているのはごくわずかの自治体に留まります。

外国人労働者の子どもの教育問題に取り組むときに壁となる幼児期や学童期の日本語教育の難しさ、専門教員の少なさ、またその配置コストなどは本来国が制度として整備すべき問題であり、自治体任せではいつまでたっても根本的な解決の見込みはないでしょう。

外国人労働者の子どもたちも含むすべての子どもたちに義務教育、そしてその後の高等教育の機会を与えることはこれからの多文化共生社会の実現を目指す上でなによりもまず実現しなければならない目標であることは明らかです。

 

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