2.a 幻の味を堪能する

目標 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。

出典:外務省訳

皆様は「ツタンカーメンのエンドウ」というものをご存知でしょうか。
ツタンカーメンのお墓から出てきた古代の豆を栽培したものと言われ、過去に話題となり今でも栽培されていますが、実は科学的な根拠は無く、何千年も前の種子が発芽するのはあり得ないと結論が出ていました。ですが18世紀中期、当時の園芸関係者が発芽させたという事で世界に広まる事になりました。
これは本当に「ツタンカーメンのエンドウ」なのでしょうか。私には信じる事が出来ません。
しかし、この様に不確かな方法ではなく、確実に種を保存する方法は存在します。
それがジーンバンクという機関で行われています。

  

農業分野の遺伝資源に対して探索収集から特性評価、保存、配布、情報公開等をしています。
遺伝資源の総保存点数が植物が23万点、微生物が約1100点、動物が約2000点保存されています。
この保存された遺伝資源が活用された例をご紹介します。

  

我々の身近な存在の稲もジーンバンクに保存されています。
「渡船」という品種が明治末期から昭和初期まで、お酒造りのお米として重宝されていました。
しかし、背丈が高く成長も遅いので倒伏等台風の影響を受けやすい、病気や虫に弱く収穫が上がらない、平地の田んぼには不向きで山際の田んぼでしか栽培出来ない等デメリットが多く、次第に作られる事は無くなっていき、1960年代には生産が途絶え、文献だけの存在となっていました。
ですが2003年にJAグリーン近江酒米部会が「山田錦」の父にあたるので作りたいと滋賀県に要望(実際には異なる。山田錦の父は短稈渡船と言われている)し、その時に滋賀県農業技術振興センターというジーンバンクに保存されていた一握りの種子から復活させ、もう味わうことは不可能とされていた渡船で作られたお酒が出来上がりました。
この様に、失われた種を復活させる事が、ジーンバンクの力により達成する事が出来ました。

  

食物として遺伝資源を利用する他、塩水に強い等、様々な特性を持った遺伝情報を持つ作物等を保存しておく事により、今現在なくとも未来に必要な時が来た場合、対応出来る様にするといった役割もあります。微生物の中にはウィルスも存在しているので、万が一の時には保存しているものを調べる事によって対策する事が出来ます。

  

種の保存により今、必要な遺伝資源を活用出来るとともに、世界の未来の安心をジーンバンクは守っています。

 

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