14.a 海洋の健全性の改善

目標 海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。

出典:外務省訳

私たちがスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで消費するビニール袋やペットボトルは海に捨てられ、それが岸壁などに打ちつける波によって細かく破壊されて、海を漂っています。この細かく破壊されたビニール袋やペットボトルは、さまざまな弊害を引き起こし、「マイクロプラスチック問題」と呼ばれています。

小さくなったプラスチック片を海洋生物が食べ、悪影響を及ぼしています。たとえば、海鳥の消化管がプラスチックで詰まったり、傷つけられたり、また、胃に大量のプラスチックごみが詰まったクジラなどの死体が海岸に打ち上げられる例もあり、問題は深刻化しています。

また、プラスチックを誤って食べた魚介類にプラスチック由来の有害物質が蓄積し、さらにそれを食べた我々の体にも悪影響を及ぼすことが懸念されています。

さらに、海に危機を及ぼしている問題は上述の「マイクロプラスチック問題」だけではなく、「海洋酸性化」も大きな問題の一つで、二酸化炭素の排出量が世界中で増える中で、海水の酸性度が高まっていくことです。海洋生物は海水の酸性度が高くなると生息が難しくなってしまうことがわかっています。

  

また、乱獲によって海洋資源が枯渇していくのも大きな問題になってきています。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、持続不可能なレベルにまで乱獲された海域別魚種資源の割合は1974年が10%、1989年は26%、2008年には30%以上、2015年には33%と急激に増加しており、このまま乱獲が続けば多くの魚が絶滅の危機に瀕することになります

そのほかにも海の生態系が崩れる要因は漁業などによる乱獲だけではありません。河川や海の沿岸部の開発工事による海洋汚染のほか、外来種の持ち込み、気候変動による水温や酸性度等の変化なども生態系に大きな影響を及ぼします。海洋及び沿岸の生態系が崩れ始めると、食文化が貧しくなってしまうことに加えて、陸上の生態系にまで影響が及ぶことが予想されます。一旦、生態系全体のバランスが崩れはじめると、農業までもが難しくなり、食糧不足に陥り、さらには感染症が流行するなどの危険も生じます。

  

海洋汚染防止や海洋資源保全の問題は、地球温暖化の問題と似ていて、ある国の海が汚染された場合、その被害に遭うのはその国だけとは限りません。ある国の行為が地球規模の影響を及ぼしてしまいます。一つの国が努力をして海洋汚染を食い止めようとしても、各国の協力がなければ全く意味がないのです。

世界中で多様な考え方がある中、少なくともこの問題に関しては各国が協力して取り組まなければならないのです。

 

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